27期生の卒業式終了、前途洋々巣立ち行く

 三寒四温の言葉通り、春の芽吹きを助ける雨も降りながら、季節は確実に春本番に向けて動いておりますが、何とそれを象徴するかの如く、15日(木)の朝、私の部屋の裏に広がる八坂神社の境内から、鶯の初音(はつね)が聞こえて参りました。例年この頃に鳴き出すので、早朝出勤する度に耳傾けておりましたが、漸く今年も鳴いてくれました。「初音」と言えばやはり『源氏物語』23帖「初音」の巻、「年月を松に引かれて経る人に今日鶯の初音聞かせよ」の歌を思い出してしまいます。光源氏36歳の新春正月、この世の極楽浄土の如き六条院、紫の上のもとで養育されている明石の姫君に、生母明石の御方から贈物とともに届いた和歌ですが、新春でも娘に再会できぬ実母の切実な思いを哀れに思う光源氏の愁いに満ちた姿が彷彿と浮かんできます。時代が下って江戸時代の俳人其角に「鶯の身をさかさまにして初音かな」という句がありますが、先日の鶯は果たしてどんな格好で鳴いていたことでしょう。想像を逞しゅうしております。本校では昨日、27期生の卒業式を執り行いましたので、そのご報告を兼ねて3月第2報をお届け致します。

 少し遡りますが、去る3月9日(木)朝、ニュージーランド修学旅行に出かけていた中学3年生が無事成田空港に着陸致しました。総員103名全員元気な姿で帰国致しましたのでまずはホッと致しました。かの国はまだ夏本番ということもあり、中には日焼け止めもままならず、焦げ茶色に日焼けした生徒並びに引率教員も目立ち、この間の我が国の寒さとは無縁の時間を過ごして来たことが強く印象づけられました。2週間という短い期間ではありましたが、英会話への抵抗も薄れ、今後の英語力が飛躍的に伸びる事を期待すると共に、日常生活面においても、自分の事は自分でする習慣を身に付けて来た人もいたりして、保護者の皆様には我が子の変貌ぶりに驚かれた方も多いのではないかと推察致しております。22日(水)の中学学習発表会で、この研修旅行の成果を、後輩諸君に発表してくれることになっており、学校行事版のアクティブ・ラーニングの完結版としての彼らのプレゼンテーション力に期待しております。

 3月10日(金)放課後、進路指導部主催で、中学1,2年生担当教員対象の今年度第3回目の「学力推移調査」結果を踏まえての研修会を開催致しました。年間の学力推移状況を、担当業者の説明を見聞きながら考察致しました。「少人数できめの細かい指導」を標榜している学校として、生徒一人ひとりの学力推移をしっかり把握し見極めることで、年度末の振り返りの資料とすると共に、上級学年に進級していく際に適切な指導・助言をすることで、更なる高みを目指して学んでいこうとする意欲を喚起しようという目論見もあります。この1年で学力が見違えるほど伸長した生徒もいれば、逆に停滞している、或いは下降気味である生徒もいる、などの分析・検証をしながら、各担任から個々の生徒への適切な指導がなされていく手はずとなっております。

 そして、昨日の卒業式、朝方こそ若干冷え込みましたが、日中はポカポカとした好天に恵まれ、絶好の卒業式日和となりました。本校27期生113名が巣立っていきました。この学年は、私の校長就任時の入学生として、個人的にも思い入れが強く、また、生徒諸君の中にも、親しみを抱いてくれた人も多く、校長就任時に、「校長室のドアはいつでもオープンですから、何か学校への意見、要望等あったらいつでも遠慮なくいらっしゃい」という話をしたこともあり、翌日すぐに何人かの生徒が「軽音楽部を創って欲しい」とか「サイクリング部を創って欲しい」とか、主として部活動の創設に関する要望を寄せてくれました。残念ながら、人的・物的制約もあり実現に至りませんでしたが、そんなことをきっかけにして、文化祭での有志バンドの顧問(今まで校長が依頼されたことなし)になったり、合唱コンクールの際の学年有志の中に入れ込まれたりと、様々な場面で、かなり緊密な付き合いをしていくと共に、彼ら自身、文化祭や体育祭などの学校行事の改革・改善に積極的に取り組んでくれて、私自身の学校行事改革(例えば、高2の修学旅行を学年・クラスを解体して、各自の希望で3方面に分かれて実施したことなど)に結果として、大いに協力してくれました。時として、学校のきまりを破ったり、羽目を外したりということも多々あったようですが、全体的にエネルギーに溢れた、仲間同士乗りやすくまた人を乗せやすい、人なつっこいところのある学年であったように思います。卒業生の答辞の中にも「本当に手の掛かる私達を先生方は叱りながらも笑い、見守り続けて下さいました」という文言がありましたが、昨日の謝恩会の席上、司会をした二人の卒業生に促されるまま、中1から高3まで、担任等、何らかの形で関わってきた先生方の発言の中に、如何に大変な学年であったかという言葉も綴られたように、教員の手をたくさん煩わせた学年であったことは否めないようです。生徒に裏切られるのは教員の宿命ですが、裏切られ裏切られながらも、私がいつも言っているまさに「掌中の珠」として6年間慈しみ大事に育ててきた結果として、確かな学力と豊かな人間性を身に付けて卒業してくれたと思います。私の式辞の中で、最後に一首お贈りした短歌は、「今日佳き日 We are Hijiriと 巣立ち行く 貴(あて)に優なる 君に幸あれ」でしたが、思わず会場から拍手が沸き起こったのには感動致しました。「君達の長い人生において、ともに聖っ子であることに誇りを持って、自分を誤魔化すことなく、気高く、品良く、しなやかに、そして優美に生きていって下さい。」と結びました。ちなみに、「We are」というのは、今年1月9日(月)、NHKで放映された「ONE OK ROCK 18祭~1000人の奇跡We are~」で、初めて披露された「We are」という曲によるものです。その曲の歌詞の一節に「鏡に映った僕が問いかける、自分を誤魔化して生きることに意味はあるか」とあり、それを引用させて頂きました。私自身、それまでONE OK ROCKというロックバンドの存在を知らなかっただけに、彼らの発する強烈なメッセージは、私などのやや干からびた感性を呼び覚まし、血湧き肉躍るような快感でしたので、18歳世代の無限の可能性を信じ、式辞の中で援用させて頂きました。27期生の前途洋々たることをお祈りしております。

 そして、年度末となりますが、前述のように、22日(水)は、中学学習発表会、中1から3年まで一堂に会し、中学2年生のイングリッシュ・キャンプの報告、中3の卒業論文優秀作の発表と朗読、更に先日帰国してきたばかりのニュージーランド修学旅行の報告と続きます。アクティブ・ラーニングの学校行事版として、最終的なプレゼンテーションをすることで完結致します。中学学習発表会は、保護者の方にも公開致しますのでご都合のつかれる方にはお出で頂き、彼らの活躍ぶりをご覧頂ければ幸いです。実質的な教育活動はそこまでとなり、23日には中学3年生(内部生)の卒業式並びに修了式を実施して、平成28年度を締めくくります。