中学1年生「社会」地理的思考力の育成を目指して (2017.11.11)

 昨夜未明から南風が吹き付け、この界隈でよく見かけるモミジバフウの真っ赤に色づいた紅葉も虚しく散り急ぐ様が、何となく晩秋の哀愁を感じさせております。日中は暖かくなり、子供達が活き活きと活動するには絶好の陽気となった中、本日は保護者の皆様の授業参観の最終日、土曜日でもあり、大勢の皆様にお出かけ頂きましたが、私も一緒に、本日は中学1年生の社会(地理)の授業を参観しましたので以下にご紹介致します。

 

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 本校の中学社会は、週4時間ありますが、それを歴史的分野(主として日本史)と地理的分野とに分け、それぞれ2時間ずつ、それぞれの分野の専門教員が担当しております。本時は、地理専門の石飛教頭による「アメリカの工業化~世界一の経済大国:USAはいかに生まれたか~」と題する授業で、形態こそ教室の並び通りの一斉授業でしたが、その展開はほとんど生徒との掛け合い、やりとりの連続というもので、先生の問い掛けに対して、生徒は逐一反応するという流れで、テンポ良く進められました。

 生徒は、予め用意された先生手書きのプリントを参考にしながら、発問に答えていく展開ですが、その基底にあるものは、アメリカの綿工業の発展をアメリカ大陸の地形の特色を常に視野に入れさせながら考えさせるという手法に徹し、地理的思考力を養うことへの視点を見失うことのないような発問に終始していたことが本授業の最大の特徴と見受けました。具体的には、アメリカ大陸の東西に連なるロッキー山脈(新期造山帯)とアパラチア山脈(古期造山帯)との相違に気付かせ、綿工業に必要な原料の調達、動力源(水車によるエネルギー)を得るためには、どちらの山脈が適切であったのか、教科書はもとより資料集、地図帳そして手書きのプリントなどを駆使しながらじっくり考えさせるところが本授業の眼目であったかと思います。発問の中には既習事項も多く含まれてはいるものの、忘却の彼方に行ってしまっている生徒もおりましたが、そこはすぐに答えを言わないで、丁寧に訂正しながら粘り強く考えさせることに終始していたのは、中学1年生という発達途上にある子供達には必要不可欠なことと、私など短気な人間には大いに参考になりました。

 アメリカで綿工業が発達したのは、1870年代、つまり19世紀中頃というところから、日本の明治維新(1868年)、その前の黒船の来航(1853年)などに話を持って行き、黒船がなぜ日本に来たのかに思いを馳せさせ、地理と歴史との融合を意識化させながら、トランプ大統領の登場で一躍世界的問題ともなっている保護貿易(共和党)と自由貿易(民主党)の話題に発展させ、アメリカの綿工業の発展当初から貿易を巡る論争が続いているという経済問題まで考えさせるという仕掛けとなっていました。その後、産業構造や奴隷制度に対する認識の相違もあり、南北戦争に突き進むアメリカの歴史にまで話が及び、リンカーンの名前が出たところで、子供達が知っているアメリカ大統領の名前の数々を披露させながら、20世紀前半、いわゆる戦争の歴史を迎えることで、アメリカの近代工業が飛躍的に発展したことにまで授業が深化して行きました。「アメリカの工業化の歴史」について、地理的視点、つまり、アメリカの地形の特色からのアプローチを基点にしつつ、世界的視野に立っての歴史はもとより、都市の発達過程、そこから派生する政治、経済分野にまで考えを飛躍させながら、ともかく考えさせる、そしてそれをプリントの必要箇所に落とし込んでいく作業を通じて、巧まずして思考力、判断力、表現力を育成していく過程が見て取れました。いわゆるアクティブ・ラーニング型授業は、例えばグループ学習として、4~5人のグループを編成し、グループ内の話し合い方式によって展開する形態が多く見られますが、このような一斉授業の中でも、個々人にいかに活発に考えさせ、発言させるか(中1段階では個々に指名しなくても発言する生徒が現れる)によって、主体的、対話的(この場合には生徒相互ではなく先生と生徒との)な深い学びに繋がっていくことを実感させられる授業でした。

図解思考の手ほどき

図解思考の手ほどき

「これまでの学習から考えてみよう!」

「これまでの学習から考えてみよう!」