中学1年「社会」日本史、巧まざるアクティブ・ラーニング (2017.11.25)

 11月もあと5日となり、本校では期末考査も目前、今日から定期考査前1週間ということで、放課後の部活動も一部試合前等の理由で特別活動する部もありますが、全体的には一旦停止、各学年とも一斉に試験態勢に突入致します。今週は21日(火)に二コマ参観しその記録を掲載致しましたが、今日は、11月11日(土)の中学1年の社会科地理的分野に続いて、同じく社会科の歴史的分野(日本史)の授業を参観しましたのでご紹介致します。これで中学1年生の主要教科については、理科第1分野(物理・化学)(非常勤講師の先生担当)を除き、専任教員による授業参観は全て終了となります。

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 前回もご案内の通り、本校の中学社会科は、週4時間ありますが、それを地理的分野と歴史的分野とに分け、それぞれ2時間ずつ、それぞれの分野の専門教員が担当しております。本時は、日本史専門の藤永教諭による、単元としては「武家政権の成立と執権政治」と題する授業で、本時の前半は、主として鎌倉時代初期1221年に起こった「承久の乱」について、後鳥羽上皇側についた朝廷軍と、鎌倉幕府側の武士団との戦力の比較並びに、武士の士気を高からしめて有名な北条政子の演説を資料で確認させながら、圧倒的な戦力を持って幕府軍が勝利した理由を考えさせたうえで、乱平定後の処置・措置などに言及し、執権政治の基盤が盤石なものとなる経緯についてまとめていきました。その過程では、先生の次々に繰り出される発問に対して、特に誰か指名されて応えるのではなく、何人かの男女生徒が我先にと発言し、テンポ良く展開しておりました。発言の中には問いに対して極めて頓珍漢な的外れなものもありますが、それを先生の方で上手く交わしながら、最終的にはより適切な答えを導き出していくという手法は、見ている者も小気味よく、一緒にその流れの中にいつの間にか吸い込まれていくような感覚にさえ襲われました。具体的には、後鳥羽上皇が島流しになったのは隠岐の島、順徳上皇は佐渡島と続いたところで、夏休み中にサマーセミナーで訪れた生徒もいる佐渡島の話に結びつけ、体験学習と上手くリンクさせることによって、記憶を遡っている生徒も見受けられました。戦後措置の一つとして、京都の朝廷を見張る役所としての六波羅探題を予め配付して置いたプリント(既に前時までに、侍所、政所、問注所など埋められている)に各自埋め込ませ、さりげなく幕府の機構についての知識も深めさせるという工夫が凝らされていました。また、幕府側の武士達への論功行賞として、上皇側から没収した荘園を分け与える事にも言及し、徐々に封建制度への意識高揚にも配慮されておりました。

 授業後半は「武士と民衆の生活」というプリントを配付、単に知識の確認のためだけの穴埋めプリントではなく、歴史的事実を確認しつつ、その因果関係等を考えさせながら必要事項を埋めていく内容で、各自主体的な作業の中に、前後左右の人と相談しながらつまり協働で埋めていくことも可とすることとし、自ずからアクティブ・ラーニング型授業となっておりました。形態を整えてのグループ学習もさることながら、平常の机の並びの状態でも十分にアクティブな活動を可能にすることが垣間見られましたが、中学1年という年代ならではの、まだどんどん自分から発言するという特性を上手く活用しながら、まさに教師と生徒の掛け合いを中心としたアクティブ・ラーニングの典型的なスタイルと受け止めました。要は30人それぞれがいかに主体的・能動的に課題を発見し、その答えを見出すべく相互に協働し合いながら、脳を活発に動かしているか、授業に集中的に取り組んでいるかが問題であろうかと思います。プリントの穴埋めがある程度終わったところで、まず武士の生活を住居の面から確認し、図面を見ながら、その特色を言わせつつ、さりげなく環濠集落という言葉や、犬追物、笠懸、流鏑馬などという中1にしてはまだ難解な用語を紹介し、歴史への知的好奇心をくすぐりながら、歴史に興味・関心を抱かせる工夫が凝らされておりました。先日(11/14付朝日)の新聞で、「教科書から消える? 脱暗記へ 入試用語半減提言」という見出しで、高校と大学教員らで作る「高大連携歴史教育研究会」による歴史用語の精選案が発表されておりましたが、中学段階からさりげなく難しい歴史用語も取り入れながら、知的好奇心を刺激することで抵抗なく難解な歴史用語にも馴染んでいくように思われました。高校の授業が暗記中心になっているからとか、知識を入試で問うのはいかがなものかなどと言って、歴史用語を半減するというのは余りに短絡的すぎないかと思います。近い将来いわゆる「大学入学共通テスト」の社会科の入試でも、暗記よりも思考力や表現力を重視するという傾向が強くなるようですが、平常の授業の中で、余り意識させることなく歴史用語に触れさせておくことは、若くて柔軟な頭脳の持ち主である中学生には必要不可欠なことと考えます。その他印象に残ったこととしては、武士の家のきまりとして、家のリーダー、つまり家督が亡くなった後の財産相続では、兄弟間の男女差別なく平等に分配するという話で、多くの生徒は男性有利と考えてしまっていたが、なぜ女性も同等であったかの問いで、女性は子孫を残せるから、という先生の答えで「あーそうか」という喚声が上がったところに、通常授業の中でのある種の感動的場面であったと思います。問いと答えの掛け合いの中で、核心に触れる問いかけで感動を共有できることこそ、みなが授業に集中している証しであると実感致しました。

新たな「気づき」が生まれる授業

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史料や絵図から考える授業

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