中学1年生「国語」導入期の古典学習はどうあるべきか? (2017.11.7)

 今日は、24節気で言うところの立冬でしたが、日中はここ聖ヶ丘界隈でも20℃を越えるポカポカ陽気となり、一頃の寒さもどこへやら、まさに小春日和の好天気に誘われて、校舎3階の1年2組の教室で展開された国語の授業を参観致しました。窓から見下ろす多摩市中、住宅街に点在する木々が真っ赤に色づき目に眩しいくらいでしたが、教室内は中学1年生の熱気に溢れ、新しい教材に挑戦しようとする彼らの目はキラキラと輝いておりました。その熱気醒めやらぬうちにと、早速授業参観記にまとめて見ましたので以下にご紹介致します

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 本時の教材は『竹取物語』で、中学入学後初めて本格的な古文に触れるものですので、いわば古典学習導入期の授業のあり方に一石を投じてくれたものと、昔取った杵柄よろしく、自らの古典学習の有り様を振り返りながら半ば懐かしく参観致しました。

 授業の流れとしては、まず最初に10問からなる漢字テストを実施、出岡先生の授業スタイルの特徴として、短時間でテンポ良く進めるということが習慣化していて、この小テストも5分間で終了、時間切れとともに後ろから回収、後ほど採点し、不合格者にはやり直しの漢字練習をして提出させることで、漢字力の定着を測っております。

 次に、前時に学習した『竹取物語』の冒頭の暗誦を全員で声高らかに朗唱、先生が「そ」と言えば「その竹の中に」と唱え、「も」と言えば「もと光る竹なむありける」「あ」と言えば「怪しがりて寄りて見るに」とリズミカルにどんどん繋いでいく展開は、耳に優しく仏教の声明(しょうみょう)を聞いているような錯覚に陥りました。多くの男子がまだ声変わりしていないこともあり、爽やかな声色が響きわたっておりました。そして、本時の場面(帝がかぐや姫のもとを訪ねながらも、姫の拒絶に遭い、虚しく引き返す場面)に入りますが、まず各自で既に書写し終わっている古文の原文に、現代語訳を付ける個人作業を5分間、ひたすらノートに訳を書き続ける人もいれば、ほとんど手つかずの人もいて、予習状況が垣間見られる場面でした。終了後、2分間だけ、教室内立ち歩き自由で、互いに教え合う時間が挿入され、実に活発に動き回り、自分で埋めきれなかった部分を友達に聞いて回る学習には微笑ましいものを感じました。この途中で先生からの適切な指示が入り、自分で分からなかったところには線を引くとか、赤鉛筆で記入するとか、ポイントとなる部分をしっかり確認させる作業にも目配りをしておりました。そして、本時のクライマックス、中学1年生は30人の少人数クラスとなっておりますが、それを4人の班(5班)と5人の班(2班)とに無作為にグループ分け(従って、授業ごとに班員が異なる)をした上で、各班に本文を記載したプリントを配付、現代語訳を班単位で完成させる作業に入りました。その際、教室の四隅に貼りだされたヒント(語釈や古文特有の表現の注釈等)を参考に、各班で1~4番の人をじゃんけん等で決めた上で、それぞれが自分の番号のヒントメモを見て回り、プリントに落とし込んでいくことで、最終的な現代語訳を完成させるまでが8分間、ここまでがグループとしての協働作業、その後7分間、今度はプリントに書いたものを各自のノートに転記させる作業、先ほどのワイワイガヤガヤが嘘のような見事に静寂な時間が訪れます。そしてラスト3分間、再びグループのまま3分間、疑問点や注意点等意見交換して、班員全体に知識をしっかり定着させる仕掛けとなっておりました。静から動、動から静への切り替えをスムースに、子供達は無駄話をする余裕もなく、アクティブに動き回りながら、文字通り体と頭を総動員して、彼らにとっては半ば未知の世界とも言うべき古文の深奥に迫っていく学習過程を通じて、まずは古典学習の導入期において、我が国固有の文化と伝統に興味と関心を抱かせつつ、これから長く続いていく古典学習を嫌いにさせないという創意工夫に満ちた授業と見受けました。ちなみに今日の授業で扱った教材の中に、虚しく帰る帝の和歌「帰るさの行幸(みゆき)ものうく思ほえて背きて止まるかぐや姫ゆゑ」に対するかぐや姫の返歌「葎(むぐら)はふ下にも年は経ぬる身のなにかは玉の台(うてな)をも見む」という和歌が出て来ますが、高校生でも解釈に手こずるような和歌を、文法には一切触れることなく大づかみに理解させようとする試みこそ、これからの古典学習には必要不可欠ではないかと参観しながら感じ入っておりました。今週は、9日(木)から11日(土)まで保護者の方々への授業参観日としております。何かとお忙しいこととは思いますが、お繰り合わせの上ご来校頂き、子供達の活き活きとした姿をご覧頂きたく存じます。

 

壁に貼られたヒントをもとにグループで現代語訳

壁に貼られたヒントをもとにグループで現代語訳

グループの皆で意見交換

グループの皆で意見交換