中学1年「理科」、高校2年「国語表現」、本物に触れ本質に迫る教育 (2017.11.21)

 11月のこの時期にしては36年ぶりの寒波襲来とかで、昨日から猛烈な寒さが続いておりますが、本日、本校では午前中、25大学の入試担当の方々にお出で頂き、高2、3年生対象の入試出願相談会を実施致しました。高3生にとっては、まさに臨戦態勢、出願に際しての最終的な意思決定の機会、高2生には、いよいよ来年に迫った大学入試に向けての各教科の選択科目決定の参考にする機会と位置づけ、毎年この時期に設定しております。25大学の入試担当の皆様には、一般推薦、AO入試、さらには指定校推薦入試と各種推薦入試の実施時期で、お忙しさの真っ最中にも拘わらず、本校の「少人数できめの細かい指導」の一環としての進路行事にご協力頂き感謝申し上げております。

 今週は、期末考査(12/2~6)を間近に控え、各教科学期末の追い込みに入っている時期でもありますが、本日は最初に中学1年生の理科(生物)の授業、次に高校2年生の国語表現の二コマを参観致しましたので、以下にご紹介申し上げます。

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  本校の中学理科は、週4時間ありますが、それを第1分野(物理・化学)と第2分野(生物・地学)とに分け、それぞれ2時間ずつ、それぞれの分野の専門教員が担当しております。本時は、生物専門の有江教諭による「シダ植物とコケ植物」と題する授業で、その目的は「花の咲かない植物であるシダ植物とコケ植物を観察し、からだの作りを理解する」というもので、本校理科の特色でもある「本物から本質に迫る教育」の一端を垣間見ることが出来ました。有江教諭は、今春大学を卒業し、本校に赴任したピカピカの1年生教員ですが、その若さとパワーには定評があり、まだまだ無邪気さの抜けきらない中学1年の生徒を相手に、びしばしと指示を出し、緩急自在の授業展開の中で、聞くべき所はしっかり聞かせ、話し合いの場面では思う存分生徒に喋らせ、集中力が続かないような生徒には折々に発散させる時間帯も設け、最終的には本時の目的をしっかり把握させる工夫に富んだ授業と見受けました。

 本日は、まず、シダとコケの本物を見せ、それを各自スケッチするところから授業が始まりました。生物実験室での授業は、4~5人のグループ編成となっており、各班単位で、思い思いにスケッチさせながら、机間巡視を繰り返し、さりげなくその相違点に注目させ、話は徐々に植物の進化の過程に進んでおりました。本校の理科の授業では、中学3年間で100を越える実験・実習を実施することから、各学年2時間続きとなっており、実験・実習の後には必ず振り返りを含めたまとめの時間が入りますので、生徒が実験・実習に取り組んでいるところで、先生は次の仕掛けを考えて話を進めていきます。それぞれのスケッチが終わったところで、本物を見ながら各自描いたスケッチを参考に、両者の相違を説明して、シダ・コケ植物の本質を探究させておりました。ここで要領よくまとめられた課題プリントを配付し、1時間目の整理をさせつつ、2時間目にはより具体的に、「根・茎・葉の区別があるか?」「維管束の有無」「水分の吸収方法」などの相違に注目させながら、いつの間にか植物の進化の過程に話が及び、藻類、シダ類、コケ類のみならず、既習事項でもある裸子植物、被子植物にもう一度光を当てて、植物全体の進化の過程とその特色をしっかり確認させるという授業の流れでした。藻類からコケ類への最大の変化は陸に上がったこと、シダ類から裸子植物への変化では、植物界の大革命が起こった、つまり「種子」が出来、シダ類までの胞子で増えていた時代とは違って、種子で大量に増えることが出来たというあたりで、生徒から「おおー」というような喚声が上がり、笑顔と感動を共有しておりました。

 授業形態としては、教室の特性からグループ編成で展開しておりますが、プリントによる課題が与えられてから、まず一人ひとりが自主的・主体的に課題に取り組む時間を取り、その後、各グループ内、多様な仲間達と教え合ったり学び合ったりの話し合いを経て、最終的には協働して課題解決に結びつける事により、主体性・多様性・協働性の涵養に繋げ得ていたのではないかと思いました。その間に、確かな知識・技能を教え込む時間帯もあり、ともすればまだまだ落ち着きのない子供達の興味・関心を喚起しながら、学習に集中して取り組む時間と、班員とおしゃべりしてでも授業に飽きさせないような工夫も見られ、結果として、動物の進化とも比較しながら植物の進化という大命題に切り込んでいこうとする意欲的な授業で、久しぶりに私自身、知的好奇心を搔き立てられ、枯渇した感性も、コケ植物がからだ全体で水分を吸い上げるように、多少瑞々しさを取り戻せたような気が致しました。

各自でシダ,コケの観察

各自でシダ,コケの観察

「まとめ」は難しい?

「まとめ」は難しい?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして今日の2コマ目、6時間目に高校2年生の国語科選択科目「国語表現」の授業を参観致しました。実施科目等は以下の通りです。

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  佐野彩雪教諭も今春赴任してきたばかりの女性教員ですが、本校の卒業生でもあり、若さの割には落ち着いた物言いで、じっくりしっかり確かな学力と豊かな人間性を身に付けさせるべく日々健闘してもらっております。本日は、東京自由が丘にある「自由が丘デパート」のご協力を得て、当該デパートの入り口パネル及び館内ポスターの企画・提案・作成を通じて、確かで豊かな国語力を身に付けさせたいという試みの授業実践でした。学校外の団体との綿密な打合せをもとに、グループで話し合い、街のニーズに応じた企画を立て、更に発信する表現力を養う、というのがこの授業の目的ですが、全体で9時間の構成となっており、事前に2時間、身の回りの商業施設の広告調査及び自由が丘デパートについて質問リストを作成した上で、去る11月7日(火)、実際に現地に出向き、デパートの事務局からデパートの概要と企画内容についての説明を受けると共に、企画箇所の確認と館内見学をすることで、各自如何にお客さんに訴える力を持つポスターを作るかのイメージを膨らませて来ました。その後の3時間、自由が丘デパートを言葉で表現する作業、具体的には、各自のイメージの集約とテーマ決め、テーマに沿う言葉集め、そしてテーマ毎のチーム分け・話し合いを経て本時に至りました。本時は、まず各班単位で、現段階で目指しているポスターのイメージについて確認した後、事務局側にテレビ電話を活用して発表、事務局の小林様に聞いて頂き、質疑応答を経ていよいよ今後の企画の方向性を確定するという内容でした。スカイプといういわばICT活用授業のほんの一端を垣間見させて頂きましたが、班代表として発表する生徒には緊張感もあり、当初声が小さくて小林様にはよく聞き取れなかったようですが、徐々に順調なやりとりが出来ホッと致しました。今後、期末考査直前までの2時間で、今日の結果を踏まえ、再度班単位で話し合い、イメージを決定し、それを具体的に文字として落とし込んでいく、つまり文章化して、それを美術部或いは漫画イラスト研究部員に依頼して、原画を作成してもらう、という段取りとなります。デパートの方ではそれをプロの印刷屋さんに出して、最終的な仕上げをして頂くことになっております。この方面には全く素人の生徒達を全面的に信頼して頂き、このような貴重な機会を与えて頂いた事に感謝申し上げております。

 さて、この一連の授業でどのような国語力がつけられるのか、ということですが、自由が丘という街のステータスを肌で感じることで、そこに住む、或いは通勤している人々の感性、意識などを想像する力を養い、どのようなポスターにしたら、人々に興味・関心を抱いて頂けるのか、気の利いたキャッチフレーズを考えることでの思考力の育成、一人ひとりの考えを互いに披瀝し合うことによって、多様なものの見方・考え方・感じ方をする友人間で協働する力を身に付けつつ、最終的には、生活に根ざした確かで豊かな表現力を育成し、それを自己満足に終わらせることなく、他に評価してもらうことによっての成就感・達成感にまで至らせる事が可能となるのではないでしょうか。「国語表現」として身に付ける知的な言語能力もさることながら、美術部・漫画イラスト研究部員の力を借りる事によって、知的のみならず美的訴求力も加わり、自由が丘デパートに足を運ぶお客さんの知的好奇心をくすぐりながら、商品の購買意欲を喚起する結果となる事を祈るばかりです。

スカイプを使って外と繋がる授業

スカイプを使って外と繋がる授業

さあ!インタビュー開始!

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