高校3年理系必修選択「生物」最終授業も実験で締めくくる (2017.11.30)

 11月も今日で終わり、本校のすぐ下に位置する都立桜ヶ丘公園の紅葉、取り分けイロハモミジの紅葉は実に鮮やか、初冬の朝日に照らされ美しく輝いておりますが、それもつかの間、やがて枯れ木の冬景色となるのも間もないことかと名残惜しく思っております。明後日(12/2)からの期末考査を目前にして、各学年、教科とも今学期の集大成として1時間1時間気合いの入った授業が展開されておりますが、本日は高3生の実質的に最後の授業にもかかわらず、実験をやるという有岡教頭の意気込みに引かれて、理系生徒の必修選択科目となっている「生物」の授業を参観致しましたので、以下にご紹介致します。

waku1201

 高校3年生の理科は、物理・化学・生物の3科目からの選択で、文系で国公立を志望する生徒は、「生物基礎・地学基礎」、「生物基礎・化学基礎」のいずれかを各2単位自由選択とし、理系の生徒は、それぞれ専攻分野によって、必修或いは自由選択として、「物理」(4単位)「物理特論」(2単位)「化学」(4単位)「化学特論」(2単位)「生物」(4単位)「生物特論」(2単位)の6科目の中から選択しております。「生物」については、受験科目として使う生徒の中には、必修・自由両方選択している生徒が多く、授業に対する姿勢も極めて積極的かつ真面目で、本時の場合も各班4名(1班のみ欠席者もいて2名)ずつで基本男女半々の構成でしたが、さすがに今までの蓄積もあり、先生の指示によりてきぱきと実験をこなしていたのが印象的でした。

 本時の実験は、「葉緑体の単離と光合成電子伝達反応」という難しい単元で、有岡教頭によると、首都大学の松浦先生からの直伝で、高校生にはかなりハイレベルの実験(この辺で生徒の知的好奇心をくすぐっておりました)ということでしたが、2時間連続、休みなしの実験を、班員それぞれ協働してしっかりやり遂げておりました。実験の目的としては「ホウレンソウの葉から葉緑体を抽出し、光合成における電子伝達反応をDCIP(2,6-ジクロロフェノールインドフェノール)を用いて測定する。」というもので、昨夜遅く近隣のスーパーで、新鮮なホウレンソウを購入してきた話から始まり、生徒を如何にこの実験に興味・関心を持たせつつ意欲的に取り組むかの動機付けということか、昨日のうちにこの実験のために事前の準備、取り分け調整液を作るために様々な溶液を準備してきたにもかかわらず、実験直前に肝心のビーカーにヒビが入り、慌てて調整液を作り直したという自らの失敗談でひとしきり笑わせた後、葉緑体の単離に向けて実験が始まりました。作業工程は①から⑫まであり、かなり複雑なものですので、ここではとても紹介しきれませんが、その過程においては、各班単位であらかじめ役割分担を決めてということではなく、相互に話し合いをしながら手順に則りしっかり進めて行きました。見ていて面白かったのは、マイクロチューブに入れた葉緑体入りの溶液を遠心分離器にかけて、上澄みと葉緑体とを分離させる工程で、上澄みを棄てながら繰り返すことで、ミトコンドリアなどの混ざりけのない葉緑体が分離されるということでした。理想的には葉緑体だけが残っていると良いのだが、という補足説明が入り、全班のマイクロチューブを3本に集約し、最終的な単離作業として15秒遠心分離器にかけて更に上澄みを棄てた後、各班4本のマイクロチューブに分け、A,B,C,Dそれぞれのチューブに各種溶液等を入れ、かなり強度の蛍光灯の光を当てて、チューブ内の溶液の色の変化を観察致しました。ポイントは、DCIPの藍色が時間の経過と共に、どのように変化していくかに注目することとなりますが、1本だけアルミホイルにくるんだチューブのみ、色に変化が現れないのはなぜか、ということから、光合成、つまり光がないと電子伝達系が働いていないということに気付かせます。最後に、単離した葉緑体一滴をスライドガラスに取り、カバーガラスをして顕微鏡で観察しておりましたが、美しい緑模様に思わず「おおー」という喚声が上がっていたのは印象的でした。常日頃から「本物に触れて本質に迫る教育」を標榜していることから、高校3年生の最終授業に至るまで、実験を通じて本物に触れさせる、そのことによって多様な仲間達と感動を共有させることに徹した授業と見受けました。

 もちろん、実験終了後には、その結果の振り返りを各自プリントに埋めていく作業が仕組まれており、観察結果をまとめると共に、結果の考察もグループ内で相談しながら、各自で記載していくことで、主体的、協働的(対話的)にして深い学びに繋がっていく様子が垣間見られました。感想までほぼ書き上がったところで、有岡先生の実質最後の授業ということもあり、現役で各自志望している大学への合格を期待しているとして、現役の場合、これから入試本番までの期間が一番伸びる時期であると、数十年前の自らの体験を踏まえながらしみじみ語ってくれました。最後の授業という意識は生徒間にも十分に伝わり、先ほどまでの実験作業でのガヤガヤ感もどこへやら、みんな神妙に聴き入っておりました。現役は最後の最後まで諦めることなく自分を信じてひたすら頑張れ、と言ったところでチャイム、最後の挨拶の号令をかける生徒からは万感の思いを込めて、「いつまでも名残惜しいですが、2学期間有難うございました」という一声こそ、教師冥利に尽きる瞬間であったと思うにつけ、教壇に立つことなく久しく時間が経ってしまった者にとっては羨ましいの一言に尽きました。

 

興味と関心を引き出す

興味と関心を引き出す

探究こそが授業の本

探究こそが授業の本