早くも秋雨前線に覆われて、今日は折角の始業式ながら、朝からぐずついた天候となり、生憎の新学期スタートとなりましたが、久しぶりに全校生徒が登校した校舎内外は活気に満ちあふれ、再び「笑顔と感動の学校生活」が始まりました。この夏もまた、サマーセミナー89講座の開講、各種部活動の練習、合宿、大会、更には文化祭の準備等各種の活動が切れ目なく続きましたが、お陰様で大きな事件、事故等もなく、皆元気に登校してくれました。8月中旬、大阪では、男女中学1年生のかけがえのない命が奪われるというおよそ想像を絶するような悲惨極まりのない事件が発生し、同年代のお子さんをお預かりしている学校として、とても人ごととは思えない日々が続きましたので、全員元気な笑顔を見せてくれたことに安堵し、胸撫で下ろしております。本日は防災の日であることもあり、始業式の後、音楽家であり、国際セラピードッグ協会理事長でもある大木トオル氏をお招きし、「被災犬のセラピードッグ~命あるものは幸せになる権利がある~」と題する講演会を催しましたので、そのご報告も兼ねて9月最初の校長日記をお届け致します。
始業式の校長講話では、冒頭、上記の大阪寝屋川市で起きた中学1年生殺害事件に言及し、命の重さ、かけがえのなさに思いを馳せ、身の安全には充分注意するよう訴えながら、9/1防災の日ということもあり、大正12年9月1日の関東大震災、平成7年1月17日の阪神淡路大震災、そして平成23年3月11日の東日本大震災に触れながら、「備えあれば憂いなし」という言葉の重みを噛みしめてもらいました。その「備え」とは単に防災ということに留まらず、「日々の学習による学力の備え」もまた重要とし、特に受験を半年後に控えた高3生には『徒然草』第98段で兼好が強調する「なんぞ只今の一念において直ちにすることの甚だ難き」を肝に命じて欲しいと訴えました。もちろん、これは高3生のみならず全学年共通のこととして、人間日々の営みの中で、何をするにしても、ついついあと延ばしにしがちのことが多いことへの警鐘であると受け止めて欲しいという思いからのものでした。最後に、2学期は9/12、13日の聖祭(文化祭)を皮切りに、高2生の修学旅行、中2生のイングリッシュキャンプ等、今年度からスタートする行事が多いこと、そして年末には合唱コンクールも予定されており、みんなの力量が試される主要行事が目白押しであることへの認識も深め大いに活躍して欲しいと訴えて結びと致しました。
そして、10:30~12:10まで大木先生による講演会となりました。講堂の固定座席では全学年入りきれないことから、中央通路に折りたたみ椅子を並べて、やや窮屈ながら中1から高3まで一堂に会して、大木先生の講話に耳傾けました。始まる前は、全学年が窮屈な空間に入っていることもあり、相当なざわめきでしたが、大木先生のお話が始まるやいなや、波音が砂に吸い込まれるような静寂さに変わり、それが約90分続きました。それほどまでに中1から高3まで大木先生のお話に吸い込まれ、集中してお聞きすると共に、犬の殺処分のくだりでは、特に女子生徒の中からすすり泣きが漏れるほど悲しくも切ないお話で、私なども込み上げるものを禁じ得ませんでした。一方で、動物介護療法の具体例として、二人のご老人とチロリというセラピードッグとの関わりを紹介して頂きましたが、犬の力は人間に勝るという思いを強くすると共に、こんな奇跡的な動物介護療法が世の中にはあるのかという驚きを抱きました。このチロリと大木先生との出会いは全くの偶然で、千葉県の某市の生ゴミ置き場に捨てられていたチロリを先生が拾い出したのがセラピードッグの世界に入るきっかけであったとのこと、まさに先生とチロリとの邂逅こそチロリの命を救うと共に、先生の人生も変えたのだという思いがして、今回の講演の副題でもある「命あるものは幸せになる権利がある」という言葉の重さを実感致しました。
最後に、本日同行して頂いた4頭のセラピードッグ(それぞれに重く暗い過去を背負っている犬たちでしたが)の、介助犬としての見事な振る舞いを披露して頂き、満場拍手喝采のうちに終了致しました。本日のお話は、防災の日にちなんだ、単なるセラピードッグの活躍をご披露頂くということに留まらず、日本の動物愛護の現状(日々たくさんの犬、猫たちが殺処分されていることも含めて)、医療現場の閉鎖性、老人介護や障害者介護の問題、年間3万人を超える自殺者の問題、いじめや差別などの問題を今なお抱える教育現場の問題等、日本人の生命観や文化・文明観など実に多岐にわたる重くも切実な問題提起を頂いた内容で、生徒諸君も溜息一つつけないような緊張と感動そして哀しみの連続であったかと推察しております。中高校生という最も多感で感受性の強いこの時期に、このような衝撃的なお話を聞く機会があり、或いは中には人生観も変わった人もいたかも知れません。大木先生は、一方で、37年前に渡米され、全米音楽界で唯一、東洋人ブルースシンガーとして全米ツアーを成功させ「ミスターイエローブルース」と賞賛されるビッグシンガーでもあられる方で、今回はそのブルースを聴けなかったことは個人的には残念なことでしたが、それはまた次回を期したいと思いますと言ってお別れ致しました。
別件ですが、去る7月28日(火)付け校長日記で触れたとおり、生徒用玄関、昇降口から旧購買跡に連なる新教室、1階多目的室、通称Learning Squareが完成し、本日から使用可能となりました。最大で長机が横に3列、縦に9列、椅子の数が80脚入りますので、見た目かなり広いスペースとなっております。前面に電子黒板を設置、後背部壁全面は純白の大スクリーンとし、プロジェクターの投影はもとより、ちょっとした映画の上映も可能なしつらいと致しました。椅子はドイツ製で軽くて持ち運びに便利な上に頑丈そのもの、よほどのことでは割れない素材とのことで、多少やんちゃな中学生の扱いにも充分耐えられそうです。廊下側は全面透きガラスで解放感があり、ICT活用授業、アクティブ・ラーニング型授業等、多様な授業形態が可能な空間となり、今後の利活用が期待されます。これに連動して、生徒用下駄箱(全864箱)も全面更新致しました。木製で重量感ある落ち着いた色合いでシックな仕上がりとなっております。今後末永く大切に使用して欲しいと思っております。
少し遡りますが、8月の土曜ミニ説明会は8月1日(土)に16組33名、8月29日(土)には11組24名の方々にご出席頂きました。2回ともとてもミニ説明会とは思えないくらい多くの方々にご出席いただいたことに感謝申し上げております。いずれも校長からは、不易流行の教育という観点から、不易なるものとして、本校の設置者である田村学園の建学の精神と本校設立時の教育目標をご紹介し、流行なるものとして、今年度からの3つの教育方針、並びに今年度の重点課題や新たに始まる学校行事等について説明させていただきました。その後、石飛教頭兼入試広報部長から、16年入試についての詳細な説明と、本校教育の特色等熱く語ってもらいました。全体の概要説明の後、校舎内の施設・設備等の見学をして頂き、終了後はスクールバスで最寄り駅までお送り致しました。29日頂いたアンケートでは、「本日は有難うございました。今回も先生方は熱く色々とお話下さいました。息子には聖ヶ丘が合っているのではないかと強く思いました。次回は息子と一緒に参加したいと思います」という過去に1回お出で頂いた保護者の方からの有り難いお言葉や、「細部まで説明して頂いてとてもよく分かりました。参加して良かったと思います。教室が思ったより広くとても好感が持てました。有難うございました」「詳しくご説明頂き有難うございました。体育館でダンスドリル部の活動が見られて良かったです。生徒達が笑顔で挨拶してくれたのが印象的でした」「ダンス部を見ることが出来て感動致しました。次回は普段の生徒の姿も見てみたいです(学校公開など)」「校舎見学の時の説明が楽しくもよく分かる内容で良かったです」など初回、或いは1回目位の方が多くいらっしゃる中に「説明が分かりやすくて楽しかった。先生達が面白い先生が多かった」というお声もあり、仲間内で誰のことかしらなどと終了後ささやき合っておりました。いずれにしても、説明会の度にこのような好意的なお言葉を頂き、やって良かったという印象を強くしております。土曜ミニ説明会は、今週末9月5日(土)にも予定しております。文化祭直前で校舎内外ごたごたしておりますが、生徒達の文化祭に寄せる情熱の一端をご覧頂くには良い機会かと思いますので、ご都合を付けてお出で頂ければと思います。なお、9/12、13の文化祭期間中にも、時間を区切りながらですがミニ説明会を実施致します。公開中の文化祭をご覧頂きながらで結構ですので、こちらにも是非お運び下さい。
こうして今日から2学期が始まりましたが、生徒諸君には来週末に迫った文化祭(聖祭)に向けて大車輪で準備をしていくことと思います。「聖春爆発」というメインテーマのもと、聖っ子達の青春が校内各所で爆発するかと思いますので、是非お出で頂き、各種出し物を見て聞いて触れて味わって頂き、青春の息吹を感じ取って頂ければ幸いです。