第3回社会科見学終了 (2015,10,5)

 毎日通過している多摩ニュータウン通りの銀杏並木がうっすらと色づき、そこかしこの木々からは真っ黄色に染まったギンナンが道路に落ち、無残にも車輪にうちひしがれている光景を見て、秋は確実に日々深まり行くことを実感しております。私の住む住宅街のあちこちの庭に純白或いは薄桃色の秋明菊が咲き誇っておりますが、茎からすっと延びた先端に咲く純白の花は、清楚にして凜とした気品があり、この季節私の最も心惹かれる花となっております。花期も長く、初秋から中秋、中には晩秋に至るまで楚々としたたたずまいを楽しませてもらっております。

 学校も年度の丁度半分が過ぎ、各学年、今までの半年を振り返りこれからの半年への思いを馳せる時期となりました。本校でも3大行事の2つまで終了し、後は12月22日(火)の合唱コンクールで締め括りとなります。ただ、この10月は、高校2年生が本校初めての3方面(屋久島・広島・島根)への修学旅行に出向くと共に、中学2年生もこれまた本校初めてのイングリッシュキャンプに出かけます。学校行事改革の象徴的なものと位置づけておりますが、その詳細についてはまたご報告させていただきたくとして、先月末から本日に至るまでの各種催し事についてのご報告を兼ねて10月第1報をお届け致します。

 10月1日(木)は都民の日ということで、一般の生徒は休業日でしたが、中学1年生の第3回社会科見学実習を実施致しました。前回のこの日記でも触れましたが、今回は、このコースを選択した48名の生徒と私を含め4名の教員で引率、「日本銀行と東京証券取引所・その周辺~日本経済の中心を歩く~」というテーマで、主として日本銀行及び東京証券取引所内の見学と担当の方からの詳細な説明を聞き、知識・見聞を深めてきました。日本銀行では、明治15(1882)年の設立以来の歴史と組織、さらには日本経済に果たす役割等をビデオで鑑賞した後、銀行内の主要箇所を見学、私などはこの年になって初めて拝見する辰野金吾氏設計の荘厳な建物に圧倒されながら、歴代の総裁の肖像画の前で、戦前戦後の激動の時代を想像し、しばし感慨も一入でした。生徒達も中学1年生ながら、必要な場面ではメモを取り熱心に耳傾けていたのが印象的でした。

渋沢栄一像前で

渋沢栄一像前で

 日銀を後にして、常磐橋を渡ったところに立つ渋沢栄一像前に集合し、その銅像をスケッチしながらその偉大な功績に思いを馳せていたところで、生憎にも雨が降り出し、記念写真をそれぞれに撮りながら、スケッチは家に帰ってからとなりました。常磐橋から日本橋を通過して楽しみの昼食場所「榮太郎」内のレストラン「雪月花」に到着、そこで日銀に勤める私の前任校の教え子4人と合流、中には20年ぶりの再会となった教え子もおり、私にとっても嬉しい再会でしたが、彼らには女子2人、男子2人とテーブルを囲み、昼食を共にしながら改めて日銀の業務内容等について生徒の極めて素朴な質問にも応えてもらいました。後日頂いた御礼メールでは「生徒の皆さんとお話ししてフレッシュな刺激をもらいました。皆さんにとっても少しでも有意義な時間になったのであれば幸いです」とか「生徒さんの溌剌とした意見が聞けて心が洗われました」という感想を寄せてもらうと共に、「また、来年も楽しみにしております」という声もあり、やはり持つべきものは良き教え子と有り難く感謝しております。担当の教員からも早速、来年もよろしくお願いします、と言われておりますので、彼らの都合も聞きながら来年もお願いできれば幸いと今から楽しみにしております。

日銀マンとの会食

日銀マンとの会食

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昼食後、「榮太郎」内で若干のお土産タイムを設けた後、東京証券取引所に向かいましたが、早足で通行するサラリーマンに気遣いながら日本橋から兜町まで雨の中歩きました。東証には前任校での社会科見学でも訪れたことがありましたが、入り口で厳重な荷物チェックがあったのには驚かされました。以前はこれほど厳しくなかったように思いましたが、これも時の流れでしょうか?東証では、日々2~3兆円の取引が為されているというお話にビックリ、構内を周りながら今まさに経済が動いているという実感を強く抱きました。構内見学後、東証の機能と組織、株式の仕組み等についてビデオ鑑賞、その後株式会社の成り立ちについて、社長役、株主役の生徒3人に前に出てもらい文字通りアクティブに実演しながら説明を聞きました。3人とも進んで立候補してくれましたが、中学1年生の積極性が窺われ嬉しく思いました。株式にはリスクが伴う反面、銀行の金利が低い現状では或いは高い配当金が受け取れる可能性もあるということが中学1年生でも良く理解できる分かりやすい説明でした。最後に、刻一刻と移り変わる株式売買の様子が一目瞭然の大きなボードに「歓迎 多摩大学附属聖ヶ丘中学校」と映し出されていることに感動しながら、それを背に記念写真を撮って解散となりました。

社長・株主役を演じる

社長・株主役を演じる

東証株式ボードを背に

東証株式ボードを背に

 

 

 

 

 

 

 

 翌10月2日(金)には中学朝礼、3日(土)は高校の朝礼と続きましたが、中学朝礼では、上記東証での株式会社の成り立ちでの説明の際、積極的に前に出て実演してくれた生徒の例から、授業や行事等学校生活全般において「NO SHY SCHOOL」で行こうと強く訴えました。授業面でのアクティブ・ラーニングのみならず、部活動や学校行事等様々な場面で自ら課題を発見し、多様な仲間達と協働して解決策を探究するためには、引っ込み思案であったり、消極的な姿勢では物事は前に進まないことをそれぞれに意識して欲しい、そのためには人前で恥ずかしがらないこと、大きな声で発表したりダイナミックに行動したりすることが大切と強調した次第です。翌日の高校の朝礼でも、夏休み中のサマーセミナーで初めて開講したエンパワーメントプログラム(高校1・2年生中心に受講)でのファシリテーターの言葉「NO SHY ZONE」(エンパワ実施の教室では一切恥ずかしがらないこと)を援用して、この学校の生徒として校内校外問わず「NO SHY SCHOOL」で行きましょうと呼びかけました。「礼儀正しく純粋で爽やか」な生徒像を良しとして、それに加えてもっと積極的に活動するためにも「NO SHY SCHOOL」の精神で頑張りましょうと結びました。明日と言わずその日から早速様々な場面で「NO SHY SCHOOL」が展開されることを期待しております。

 同じ10月3日(土)には、10月最初の土曜ミニ説明会を新たに整備したLearning Square(通称LSルーム)で開催致しました。ミニとはいえ今回も7組15名(うち高校受験希望2組)の方々のご参加を頂き、まず私の方から学校概要と聖ヶ丘の教育の特色、取り分け教育方針としての3つの柱、今年度の重点課題であるアクティブ・ラーニングと英語教育の充実・深化についてはビデオ映像を交えて説明させて頂きました。その後、私の説明を補いながら石飛教頭兼入試広報部長から2016年入試に向けての詳細な説明をさせて頂きました。終了後は校舎内の施設・設備をご覧頂き解散となりましたが、終了直前には、熱心に質問もして頂き、少人数ならではの和気藹々とした説明会となりました。終了後頂いたアンケートでは、「少ない生徒数ならではのきめの細かい指導や、先を見据えた教育方針など興味を持って聞かせて頂きました。私も子どもだった頃、受験をしに参った事を思い出し、感慨深く教室を回らせて頂きました」というかつての受験生の保護者の有り難いお言葉や、「説明会に来て良かったと思います。実際に来てみないと少人数の学校の良さは分からないと実感させられました」というお声が何人もの方から寄せられたように、今回お出で頂いた方いずれも初めての方ばかりで、ミニ説明会も地道にコツコツとやっていく事の大切さを改めて感じ取らせて頂きました。

出産直後の動画見ながらの説明

出産直後の動画見ながらの説明

 少し遡りますが、去る9月29日(火)の4,5,6時限、高校1年生の「妊娠、出産と健康」と題する保健の授業に、現在産休中の本校数学科の近藤梨絵教諭に生後6ヶ月になるお子さん共々にお出まし願い、まさに本物に触れて本質に迫る教育を実践してもらいました。担当の本村教諭は本校の卒業生(野球部で活躍したOB)で、昨年本校に赴任したばかりですが、ともすれば生徒の余り興味関心を示さない「保健」の授業で、いかにしたら生徒の関心意欲を引き出すかに腐心し、「本物に触れ本質に迫る教育」実践を試みておりますが、今年の6月には、体験活動を取り入れた飲酒防止指導を実施、7月13日付け「日本教育新聞」にも大きく取り上げられました。言うまでもなく、未成年者の飲酒防止教育は,科学的にアルコールによる心身への影響を理解し、生徒自身が考え、飲酒に誘われた時、しっかりと断るための実践力を身につけることが重要ですが、その時の授業では、ビール酒造組合で作成した中高校生向け映像教材「先生のための『未成年者飲酒防止』教育ツール」のDVD版を視聴した後、アルコールパッチテストを全員で行い、更には数名の生徒による飲酒状態体験ゴーグルによる疑似体験まで実施、これらの模様が詳細に紹介されております。それぞれの単元目標に合わせて、生徒の興味関心を高める授業ツールにはいかなるものがあるかを常に念頭に置きながら授業実践をしてくれておりますが、今回はついに「妊娠・出産」という難しいテーマに本物のお母さんと赤ちゃんに来てもらい直接話を聞くことで、思春期特有の繊細な感受性を揺さぶろうという試みでした。

やや飽き気味の赤ちゃんあやしつつ

やや飽き気味の赤ちゃんあやしつつ

 当日、近藤教諭の方から、妊娠中の体験から始まり、出産の生々しい体験談(実際はかなりお産が軽く済み、巷間言われているような鼻からスイカを出すような苦しみはなかったとのことですが)、出産直後の赤ちゃんの様子、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月そして6ヶ月の現在に至るまでの成長していく様子等写真や動画で紹介しながらその時々の感想や感動等熱く語ってもらいました。その間、お子さんは時折ぐずり、ついには泣き出したりもしましたが、これまた良い教材とばかり平然と語り続ける近藤教諭の姿に、母になるとここまで強くなれるのかと見ている私どもの方がハラハラドキドキでした。終了後のアンケートで「授業を聞いた後の妊娠についてのイメージ」という項目では、「女性は大変なんだと改めて思いました。その分男性の支えも必要だと思いました。また、出産や陣痛の痛みやかかる時間など個人差があることが分かりました。先生も赤ちゃんも幸せそうでした」とか「出産は痛そうだなと思いましたが、赤ちゃんの可愛さですべて吹っ飛ぶんだということを実感しました。産んだ後ハイテンションになるというのを初めて聞きました」「愛くるしい。先生の赤ちゃんでこんなに思うから、自分の子どもだったらもっともっと可愛いだろうなと思う。妊娠も乗り越えられそうな気がする。でも鼻からスイカ、内臓が出てくるんじゃないかとか、痛くて死んじゃいそう」などと言う声が、特に女生徒からたくさん寄せられました。最後に「今日の感想」欄には、実にたくさんのコメントが書かれておりましたが、中に「私は2人子どもが欲しいと思っていて、お母さんには1人目の子は大変と言われているのでどうなるかととても気になります。ですが、人によって陣痛の時間などが違うと思うので、日々の生活や運動を変えられるように心がけたいと思いました。そして、近藤先生の話を聞いていて、より赤ちゃんは可愛いなと思いました。やっぱり命って大事だなということを感じたし、大切にしていきたいと思いました。今日の体験で、より人のことを大切にする気持ちが高まったので、これからは人のこともきちんと考えられるようになりたいと思います」という、この授業の目的にほぼ叶うような感想も見られ、この授業の彼ら若者に与える影響は測り知れないものがあったように思います。子育て奮闘中で何かと大変な中、貴重なお話をしてもらった近藤先生並びにお子さん(泣き声でも参加)にはこの場を借りて厚く御礼申し上げます。

 最後に私事ですが、昨日(10/4)かつての勤務校神奈川県立上溝南高校の卒業生久島千鶴さんの納骨式が相模原市内の某霊園でありました。彼女は長くスイスの銀行に勤務しておりましたが、もう一昨年になりましょうか、突然もやもや病という難病に襲われ、久しくスイスにて厳しいリハビリを含む闘病生活をしていたものの、薬石効なく、昨年51歳という若さで亡くなり、今年1月既に遺灰となって無言の帰国をしたものです。ご両親のご心痛いかばかりかと拝察しながら、公務多端で告別式にも参れず、今回の納骨式に参列させて頂きました。彼女の生前を彷彿とさせるかのように昨日は素晴らしい秋晴れに恵まれると共に、当時の同級生も大勢参列しており、皆それぞれに慟哭の涙禁じ得ませんでした。真新しいお墓の前でご導師読経の際、一陣の風と共に一瞬白い蝶が舞ったのは、純白の蝶に変身した彼女の魂が、参列者に永遠の別れを告げているようで、私などは、最後の最後まで細やかな気遣いを見せる彼女らしい振る舞いであったように感じられ止めどなく涙が流れてしまいました。ご冥福をお祈りしております。